「いつかは独立できたらいいな~」そんな風に思ったことのある方は少なくないでしょう。しかし、その後に「でも・・・」と続いた方も多いはず。心配なのは、資金ですか?勇気ですか? 自分に薬局経営なんてできるのだろうかと不安な方のために、薬剤師としての知識・経験のほかに何が必要か、また薬局を運営していく上で大切な経営者マインドについて、薬剤師であり、経営コンサルタントでもある阿久津みづほさんに伺いました。
(2010年10月取材)
全方位的なコミュニケーション能力、ありますか?
コンサルティングの過程で、実際に薬剤師として現場に入らせていただくこともありますし、今までの経験の中で様々な薬局と薬剤師さんを見てきていますが、コミュニケーション能力にやや欠ける人が多いかなと感じています。専門家として服薬指導という面から考えますと、重要な業務をきちんとこなされ、また知識を向上させようという意欲も強く、接遇的な面でも問題はないのです。しかし、専門家であるが故に視点が狭くなり、結果的に幅広いコミュニケーション能力は不足となってしまっているのかなと考えています。
薬局経営を志すのであれば、対患者さんに加え、薬局内、会社内、取引先とのコミュニケーションというのがさらに必要になってきます。それは、社長としての自分が従業員を管理する上で大切であったり、経営に必要な情報を収集するためにも重要であったりします。薬剤師という職種は、製薬会社のMRでの営業経験や、ドラッグストアで小売経験をされていない場合には、一般企業の方に比べるとコミュニケーション力が弱くなっていくもの、ともすると世間知らず的に見られることもあるのだ、と自ら思うくらいで丁度よいかもしれません。
ドクターとのお付き合いは、社長の大事な役目
対外的なコミュニケーションの重要な例で言うと、処方せんを出してくださるドクターとの関係があります。院内処方から院外へ移行されるときなど、院内でのやり方をそのまま踏襲するケースが見受けられますが、患者さんが戸惑わない程度の変更なら、自分の薬局のやり方に合わせていく方が、長い目で見て良い結果となるはずですから、その様な点も相談をして変更することになるのです。
とくにマンツーマンの場合には、クリニックと薬局はパートナーのような関係でありたいもの。お互いにとって良いように、提案できることが望ましいですね。ドクターから言われることに対して受け身でいると、自分が大変になってくる局面が出てくるかもしれません。例えば、もちろん新薬に切り替えの対応はするけど、在庫もまだあるのに、どうしよう…ということにもなりかねません。後手後手にならないよう、常日頃からのコミュニケーションで、早い時点から話を聞ける、話をできる、というような関係を構築したいものです。
処方せんを複数の薬局で受けている医療機関とのお付き合いは、他の薬局との関係やバランスを考えねばなりませんが、それでも、もし先方での勉強会や忘年会などの行事に誘われることがあれば、せっかくのお誘いです。伺うのがマナーと言えるでしょう。そうした"お付き合い"は薬局長ではそれほど求められなくても、薬局経営者であれば自身が目配りすべきことと心得ましょう。
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阿久津みづほ Mizuho Akutsu
薬剤師・中小企業診断士
メディアーチ株式会社・代表取締役。大学卒業後、情報システム開発会社での勤務、米国留学を経て、薬剤師として調剤薬局へ勤務後、医療機関への経営コンサルタントに携わる。中小企業診断士を取得後、2009年にメディアーチ(株)を設立。現在は医療現場での経験と語学力を活かし、医療分野においての各種コンサルティング業務を中心に、海外での中小企業支援業務にも従事している。